粋を探求するー

粋な振る舞い、粋な着こなし、粋な言葉、粋な生き方
2015-03-31

「パイプの粋な吸い方」 鈴木達也

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※このコラムは『いき』(粋人会議編・2010年発刊)から抜粋したものです。

パイプは特殊な人種のものと思われていたようだね。私がパイプクラブに入ったのは三〇歳前だったかな。その当時のメンバーは、絵描き、物書き、カメラマン、大学教授やジャーナリスト。

知的文化人というような人たち?

そう思っている人たちなんだな(笑)。
十九世紀の英国の作家、サッカレイの言葉なんだがね、『パイプは哲学者の唇から英知を引き出し、愚か者の口を閉ざす』とあるからね。

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一般論として、わが国にはパイプをくわえて仕事をする環境はないが、私が仕事を始めるときはまず、PCの電源を入れ、次にやることはパイプの火をつけることなんだ。当然仕事の途中で火は消えてしまう。消えたら、また点けりゃいいんだよ。

はっきりいって、パイプは美味いから喫うんだ。いくら格好つけようと思っても、まずけりゃ喫わないものね。もうひとつは香り。見覚えのないご婦人から、「とっても良い香りですね。」と声を掛けられることも。パイプはオトコの小道具なんだ。鑑賞にたえ得る美術工芸品クラスもあって、趣味としては最高だと思うんだな。
社交の道具あるいはオトコの小道具として、パイプはいろんな文化の背景にあったんだ。だからこそ所作も大事なんだよ。野暮ったい喫い方はしたくないね。
決まりはないけれど、所作も含めて楽しむってところがあると思うよ。

要するに、他人に迷惑をかけず、美しく、美味しく喫うってことなんだ。くつろぎの心をもって美しく喫うことで、周囲の共感を得ることになり、ゆったり落ち着いた気分で喫うことが、自らの思考を深めることにもなるんだよ。
私は、知人にパイプ喫煙を薦めるときには、「少しは頭を良くしたけりゃ、パイプにしなよ」と言うことにしているよ。

鈴木 達也 すずき たつや
喫煙史(伝来史および伝播史)・パイプ史研究者。トランステクネインターナショナル(株)社長。国際パイプ・アカデミー(英)評議員(終身会員)、ドイツ・クレイ・パイプ学会など各学会、CIPC国際パイプ・クラブ委員会(副会長)、サン・クロード・パイプマスター・コンフレリー(仏)など各団体に所属。『第三版 パイプ大全』(共著、日本パイプクラブ連盟編、未知谷)、『喫煙伝来史の研究』(京都・思文閣出版)などの著書の他、論考や翻訳、講演など多数。