粋を探求するー

粋な振る舞い、粋な着こなし、粋な言葉、粋な生き方
2015-03-24

「自分が人にどう見られているかを意識するのが粋」山本豊津

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※このコラムは『いき』(粋人会議編・2010年発刊)から抜粋したものです。

道を作るということの、どこに価値があるかというと、基本的には身体的な知性。本を読んで言語的な知性を学ぶのではなくて、身体的な知性を身につけると、美しく振る舞える。例えば、ある茶室の空間のなかで、自分はどの位置にいなければならないかを瞬時に判断しなきゃならない。その瞬時の判断は経験がないとできないですよね。そういった身体的な知性が、身なりを飾るとかじゃない美しさを作っていくと思います。自分の身体が自然と動くような知性を身につけることができるのが書道や華道、茶道なんです。道と美とつながることが日本の文化です。

いま銀座で問題なのは、九時を過ぎるとみんな店を閉めてしまうことなんです。とくに美味しい食べ物屋が早く閉めてしまう。お芝居や映画を見た後に集まって、今日のお芝居はどうだったとか、議論が文化であって、映画を見ること自体は文化じゃないんです。議論をしながら、わいわいと騒ぐ場所がないと、文化が生まれないんですよね。それはアートも同じで、アートの意味をどう読むかっていう議論がないと文化は育たない。残念ながらそうした批評が日本には育ってないので、いまの日本のアート事情はちょっと寂しいんです。

アートは過去とのコミュニケーション。例えば僕がダ・ヴィンチの絵を見るということは、ダ・ヴィンチの時代を生きた人と、絵を通じてコミュニケーションするということなんです。アートにおけるコミュニケーションは生きている同士のコミュニケーションばかりではなくて、死んだ人、なくなった過去、そういうものと僕たちがコミュニケーションを持たないと、知的な好奇心は生まれないじゃないですか。世界にはたくさんの美術品が残っていて、美術館に行って、それをどういうふうに面白く絵解きしてくかっていうのが美術の一番大きな醍醐味だと思うんですよね。

粋っていうのは、この頃少し思うようになったのですが、自分が人にどう見られているかを意識するのが粋だと思うんですよね。例えば自分が今日ここに来て、どういう所作をするのか、どういう服装をするのか、この絵について僕がどうしゃべるのか、自分がそれをすることによって人からどう思われるのかっていうのを常に念頭に置いているのが粋だと思うんです。その時に一番心掛けなければならないのは、相手が予想していることを外すこと。予想通りの話をしても、これは粋でもなんでもない。相手が思っていることをどこでずらし別次元に飛躍させることが粋なんですよ。

山本 豊津(やまもと ほづ)
日本で最初の現代美術の企画画廊「東京画廊」の創始者である山本孝の長男として生まれる。武蔵野美術大学建築学部卒業後、衆議院議員である村山達雄の秘書として一度美術業界を離れるが、81年に「東京画廊」に参画、現在代表を務める。現在は世界中のアートフェアに参加するほか、展覧会や都市計画のコンサルティングも務める。
http://www.tokyo-gallery.com/