粋文化探究会とは

ご挨拶

日々の生活の中で、潔さの中に美を見出すこと。思い切り良く行動すること。
粋な振る舞い、粋な着こなし、粋な言葉、そして粋な生き方は、私たちの行動の美学になってきました。

善悪損得を超えて、無常観をもちつつも、淡々と決断しながら日々を生きて行く、生き様。これらは決して答えが出るものではありませんが、求め、探求し、行動に移すことに価値があるはずです。

私たちは再度「粋」に注目し、各分野の方々へのインタビューを通じて、また、出版物の発行、寺子屋の設立、古民家の再生、苔庭の保守などの行動の中で、これからの粋な文化を探求していきます。

オープニング特別対談

財団法人粋文化探求会の発足を記念し、代表理事である流石創造集団株式会社代表 黒崎輝男と理事である東京画廊代表 山本豊津によるオープニング対談をおこないました。「粋」という価値観をひもとくと共に、これからの粋な文化のあり方についてざっくばらんに語ります。
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左:山本豊津 / 右:黒崎輝男

粋もアートも反権威

黒崎:これからの粋を作っていく事、それが日本文化の中心になってくると思います。粋な江戸、粋な東京、粋な画廊。「ぼくの伯父さん」から「粋なおじさん」ということで。でも、粋なおじさんというのが最近いなくなったじゃないですか。

山本:ぼくたちの世代の価値観のひとつに、大企業に就職したいというのがあったでしょ。

黒崎:ああ、粋じゃないですね。

山本:それか役所に入る。そういうような文化が根づいているから、僕はそうでなくて、スティーブ・ジョブスが大企業に勤めない様に、自分独特の美意識で生きるのが粋じゃないか。

黒崎:粋のイキというのは意気込むのイキでもあるし、息を吸うというイキでもある。粋がってやろうというパワーと、仏教的な無常感。そんなにやったって結局は死んでしまうという気持ちと美意識があると思います。

山本:それに加えて、反権力があるね。

黒崎:確かに、反権力ですね。基本はアンダーグラウンドで、サブカルチャーを基にしている。

山本:そう、だから既存の価値観をちょっと斜めに観ている人達は、どちらかというと粋の価値観に近いよね。

黒崎:アートもそうではないですか?

山本:そうだね、アートの場合は反権力というか反権威だね。だから日本画で権威があるアーティストがいるとすれば、それに対して俺たちはそれとは違うんだといって作品をつくっていくような姿勢をもつ。反権威と反権力というのが粋の文化の中にあるなと。

銀座の粋な人たち

山本:例えば裏地に凝るとか、江戸時代に贅沢禁止令が出て、そんなにお金を使ってはいけないとなると見えないところにお金を使うようになる。制限があっても必ず逃げ道を作って遊ぶこと、それも粋だよね。

黒崎:よく黒人のラッパーがお洒落なパンツを履いている。昔は上着は綺麗な高いものを着ているのに、パンツはそうでもなかったり、もしくは靴下がダサいとか。高価でないスーツを着ていても、中はちゃんとしてる、そういうが感覚が欲しいですね。

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山本:たとえばこの頃アメリカからコレクターが来る。コレクターたちはプラベートジェット機なので、ジーンズにTシャツとかシャツ一枚なわけ。考えてみれば自分の家から車にのりプラベートのジェット機で羽田に降りるから全部プラベートなので着飾る必要がない。ただ靴だけは高級なものを履いている。

黒崎:別に革靴でなく運動靴でもお洒落なものとか。そこに文化がある。

山本:日本人でも私の画廊の近くにある、萬年堂の社長、樋口さん。彼はなかなか洒落た靴を履いているんだ。和菓子を作りながらそういう感覚を持っている。

黒崎:豊津さんと話が合うの?

山本:そう、例えば東京画廊の展覧会に樋口さんに彫刻にふさわしい和菓子を作ってと、彼は「山本さんこういうのはどうか?」てオーダーメイドで作ってくれる。

黒崎:小さい会社なの?社長の言う通りに作る職人がいるの?

山本:いやそれが職人に作らせてるのかって聞いたら、「山本さん、職人には無理」だって。なぜかというと職人は決められた事しかできないって。それで自分で作るっていう。

黒崎:なるほど、それがいいですね。

山本:この前ね、茶会のためにココナッツの入った和菓子を作ってくれた。最高に美味かった。

黒崎:それをやれる体制を維持しているのが銀座の個人商店の良さ。大きくなりすぎてしまうと、そういう体制が維持できなくなりますね、社員が何千人もいると。

山本:和菓子を作りながら、結構履いている靴がおしゃれ。この靴高いだろう?て聞いたら、はい数万円しますって。

黒崎:それはいいですね。

山本:そう、無駄な洒落ではなくきめるとことはきめているんだよ。

黒崎:あとはどんな人がいますか?

山本:銀座で粋なのは壱番館洋服店の渡辺さん。彼も行く所まで行くから。この間、お茶会で、足袋を赤と黒互い違いに履いているの。それで雪駄も赤と黒互い違いで履いてる。つまり足袋と雪駄で赤と黒の市松模様になっていた。これもなかなか粋だった。

黒崎:粋ですね。それは新しいタイプですね。昔のように決められたファッションではなく。

山本:壱番館でオーダーの洋服つくってる彼が、普通の着物を着たらつまんないじゃない。だからひと工夫するわけ、それがなかなか面白い。意外といないんだよ、そういう人。

黒崎:ちょっとひねてないとね。

山本:そう、ちょっとひねてないとね、変じゃないと。

黒崎:ロンドンでスーツを作らせた時、日本と違ってわざとボタンがとれるくらい緩くしていた。ボタンはとれるのが当たり前、布にガチガチに食い込ませるのは野暮だと。そういう少しずれたり、ほころびたりという事を大切にしつつも、お洒落というのがいいですね。

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山本:あと、銀座にとってはサンモトヤマの茂登山会長がやっぱり一番です。グッチとかエルメスを日本に紹介しても、勝手にやるならやれって、全部離した。もう見事で、未練がましくない。

黒崎:そうね、見苦しくないですよね

山本:そうとても。だから僕は茂登山さんを尊敬してる。若い人と話すのが大好きだし。ああいう粋な人が銀座にいると、先輩として見習いたいと思う。

あとあんまり一生懸命に見えるのはつまらない。ただ、はたから見てとんでもなくくだらない事を汗かいて一生懸命やってるのは面白いんだけど 笑

黒崎:そうそう笑

山本:なんでこんな事を一生懸命やってるんだっていう笑

粋とアート

黒崎:粋なアーティストていますか?

山本:昔は遊ぶだけ遊んでもうやることがなくなってアーティストになった人がいるんだよ、それが面白い。

黒崎:吉原治良さんとか?

山本:そう具体の吉原さんとかね。

黒崎:マルセルデュシャンとかもそうですね。

山本:あそこまでいくとね、もう遊びがコンセプチュアルだから。知的な遊びだから。

黒崎:アートを集めている人とか、コレクターやパトロンさんとかでは?

山本:うーん、アートを集めてる人も、僕が知ってる限りでは、昔みたいにわからないものを買うって人が少なくなった。昔は本田宗一郎さんの右腕だった藤沢武夫さんは、うちの画廊にてフォンタナを買ったりするわけよ。

黒崎:ルチオ・フォンタナを。

山本:そう、キャンバス切っただけのもの。

黒崎:面白いと。イキにかられて粋を買うというのがいいですね。

山本:やっぱり今の人達はこれは有名ですかとか、これは今オークションでいくらですかとか。

黒崎:ちょっと寂しいですね。

山本:そういう意味ではこの人達についていきたいていうお客さんは少なくなった。

黒崎:それはなんでですかね?

山本:やっぱり日本全体が先細りしていくイメージはある。人口規模が減っているのも明らかだけど、気持ちもなんか先細ってる気がして。

黒崎:なるほど、つまり真面目なだけなのはいけないんです。

山本:発想を切り替える。今のことを守ろうていうのはちょっとね。

黒崎:そこに粋があると思うんですよね。

銀座の粋-大人の遊び場

黒崎:銀座にとっての粋とは何でしょうか?

山本:まず、大人の遊び場だったということです。衣食住の文化を遊ぶ場所として。銀座には複合的に大人が遊べる場所はかろうじてまだ残っている。
黒崎さんだって銀座で食事するのは刺激的でしょ!やっぱり新宿や渋谷とは違った、大人の食の世界があるでしょう。それがやっぱり銀座の魅力なのかなと。今日もブラジルのコレクターが来て、2点買ったすぐその後、寿司食いに行った。

先日は、イギリスのスコットランドの館長が来た。新美術館のマグリッド展に4点貸した関係で来日した。お昼食べに寿司の新太郎へ案内したんだけど喜んでくれた。

黒崎:あの地下のところ?

山本:そうそう。あそこはうちの弟も「兄貴こんなところどうやって見つけたの?」てびっくりするような所だから。

粋な女の人の方が多いと思う

黒崎:粋文化探求会で粋をテーマに取り組むのは、粋でないと生きにくいから、ということですね。

山本:月1回、男だけのお花の教室をやってる。そこの先生が「豊津さん、同じ教室でも男の人と女の人では全然行動が違うのよ」なんていうから、「どういうこと?」って聞いたら、男の人は無駄話しない。男の人は教室に来て花材があったら、すぐ生け始める。だけど、女の人はまずお茶汲みながらワイワイやる。そこがだいぶ違うっていってた。

黒崎:粋な女の人っていますか?

山本:粋な女の人はいるよ。最近は粋な女の人の方が多いと思う。まず第一に、ひとりで飯を食いに行ったり、ひとりで飲みに行くっていうのが増えてきたと思う。

黒崎:ひとりで食べてる女の人?

山本:うん。去年池袋のコミュニティ・カレッジでアートの講座をもったんだけど、人が入らなくて、4人くらいしかいないからもう辞めたいっていったの。そしたら山本さん好きなことやっていいよっていうから、じゃあ、半年で銀座の寿司5件食べに行こうぜ、なんてのをやってたの。

そしたらけっこう10人くらい集まった。カウンターは10人しか入れないのでそれ以上は集まれないんだけど。そしたら7割くらい女性なんだよ。で、そのうちの半分は若い人なんだよ。そこに来た数学の先生なんておもしろい先生でさ、女性なの。

それで、食べにいく5件の寿司屋を(店主の)世代で分けたんだよ。70代、60代、50代、40代でジェネレーションで寿司屋を分けて。そしたら40代の若い子達は、なんと70代の人が握ってる寿司を食いに行くんだよ。60歳以上の人は40代の寿司屋にいくの。

なんでって若い女性に聞いたら、そのおじさんは自分が話しかけない限り話しかけないからっていうんだよ。だからすごい楽だっていうの。じっと座ってて、ちょっと話しかけるとおじさんもこっちに来て、べらべらっとしゃべる。で、こっちから話しかけない限り向こうから話しかけてくることは無いから、すごく楽なんだって。

で、これはね、銀座のバーテンもそうなんだよ。ハートマンに行くと、女性ひとりで飲みに行く人が増えている。昔さ、女性がニューヨークのバーにひとりで飲みにいく映画があったりしたけど、あの中では女の人がお酒をひとりで飲みに行くのは否定的に見られているわけよ。そうじゃないんだよね、今は。ちょっと独りで寿司食って帰るとか、ちょっと一杯飲んで帰るとか。

黒崎:粋ですね、昔の旦那衆がやってたことを。

山本:そう!そうなの。

黒崎:今は女の人がやってると。最高ですね。
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山本:ほんとに、我々の世界に入ってきたなと思うんだ。そうするとね、銀座は安心なの。
だから今後、粋文化探求会でも取り上げてほしい。

黒崎:粋な女の人を探して、そういう人達を主役にしたらいいですね。

山本:21世紀は男女差ってのはなくなるから。遊び方でどう違うかって区分けをしてみるのもいいんじゃないかな。

対談者プロフィール

黒崎輝男(くろさき てるお)
1949年東京生まれ。「IDEE」創業者としてオリジナル家具の企画販売・国内外のデザイナーのプロデュースを中心に、”生活の探求”をテーマに生活文化を広くビジネスとして展開。東京デザイナーズブロック、Rプロジェクト、スクーリング・パッド、青山国連大学前でのFarmer’s Marketや表参道COMMUNE246など、東京の今をつくるプロジェクトをいくつも仕掛けている。

山本 豊津(やまもと ほづ)
日本で最初の現代美術の企画画廊「東京画廊」の創始者である山本孝の長男として生まれる。武蔵野美術大学建築学部卒業後、衆議院議員である村山達雄の秘書として一度美術業界を離れるが、81年に「東京画廊」に参画、現在代表を務める。現在は世界中のアートフェアに参加するほか、展覧会や都市計画のコンサルティングも務める。

今回対談をおこなった場所

東京画廊
1950年にオープンした日本最初の現代美術画廊。開廊当初から引き継がれる先駆性を堅持し、東京と北京を拠点に日中韓を中心としたアジアの現代美術、幅広い世代・地域のアーティストを世界に発信している。

〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7階
Tel: +81-3-3571-1808 Fax: +81-3-3571-7689
http://www.tokyo-gallery.com/

開廊時間:火~金 11:00-19:00/土 11:00-17:00
休廊日:日・月・祝